2021年1月2日土曜日

風狂の空 城野隆

 宣伝文句に「平賀源内が愛した天才絵師」とあるから絵師(小野田直武)の話かと思ったら、絵師の話ではなく、平賀源内の話と、直武の話とごちゃ混ぜになり、もっと悪いことに、吉次郎という絵師(実は司馬江漢)が出てくる。吉次郎は本作では悪役として登場するが、司馬江漢が直武との確執で女を抱かせたり、殺そうとしたりしたという話は作り話丸出しだ。また田沼意次も話に登場するが、この作家の特徴か、「一枚摺屋」でも水戸光圀をだし、けれん味を出しているが、どうも話の筋が分からない。分からない原因は誰が主人公か分からないからである。源内か直武か。混線したままで話が進んで行く。推理小説でもないし、天才絵師の内面を抉る話でもない。政界の裏話でもない。中途半端。

杉田玄白の「解体新書」の付絵を完成したところで話を終えてもいいのに、あとだらだらと引き延ばされた感じ。付絵もその苦労や描き方など詳しくは述べられていず、表面的叙述に過ぎない。

余り読む価値がない。駄作。


0 件のコメント:

コメントを投稿