2022年7月19日火曜日

塞王の楯(采王の楯)今村翔吾(しょうご)

 552ページもある大作。さすが直木賞を取っただけある。特に、穴太衆の頭・飛田匡介(とびたきょうすけ)と国友衆の頭・国友彦九郎との対決が読みごたえがある。石垣を組む職人と鉄砲を造る職人との対決である。

最後の大津城での攻防はすごい迫力があり、読者をどんどん引き込んでいく。天守閣に大筒の弾が当たらないように高さ8メートル、幅30メートルの石垣を造り、ひっきりなしに飛んでくる弾の合間を縫って、崩れた石垣を命を張って修復する場面は圧巻である。

石垣の切り出し方、運搬法、積み方が詳細に述べられ、臨場感がある。石積職人の棟梁はあのように(甲の一、乙の二、丙の三など)石を瞬間的に見てどこにどう積むかわかるのだろうか。石垣に要石というものが存在するのだろうか。

玲次との関係がはっきりしないが、その他は文句ない出来で、久しぶりにいい作品を読んだ。

ちなみに今村氏は1984年生まれ、角川春樹小説賞、吉川英治文学賞、山田風太郎賞その他を受賞している。


2022年7月14日木曜日

Significant Moments in the Life of My Mother by Margaret Atwood

 Mixture of the writer's remembrance of her young days and her present thoughts about them. The anecdotes are funnly but her philosophy behind them are difficult to understand. However, on the whole she mingled them well. Her mother enjoys talking about her daughter nonchalantly, but the daughter does not always enjoys it. Rather she feel ashamed hearing them. Her world and her mother's world are quite different. Mother clinges on her past while the daughter loves to analize each anecdote

This is a collection of her anecdotes and her comments about them. As a whole I did not enjoy the story. 

2022年7月12日火曜日

泰緬鉄道からの生還 アルバート・モートン

第二次世界大戦勃発時、シンガガッポーるが陥落し英国兵が多数捕虜になった。そのうちの一人、アルバートモートン氏による日記である。

日記は1942年11月4日から1945年12月29日まで書かれている。

最初のページ

「我々は午前八時45分にセレラン地区を出発、(略)それぞれの貨車に31人ずつ乗せられ、横になる場所もないほど家畜のように詰め込まれた。午後二時にクアラルンプールに到着した。」

捕虜収容所での生活は鉄道を敷く作業であるが、何度も繰り返されるのは、体調のこと(マラリア、赤痢、下痢、腹痛)、食べるものが豚の餌みたいに粗末であること、英国捕虜たちの下品な、不誠実な怠惰な行動、オランダ人やオーストラリア人なども捕虜で敵対関係にあったこと、いつもイギリスに残してきた家族(母、妻、息子)のことなど、

最終ページ

イギリスの南部海岸、サウスハンプトンに係留したときの日記。

「しかし、夢にまで見たロンドンの通りや行き交う人々、これらすべてを現実として見られるのはなんと素晴らしいことか。ありがたい。無事に帰国できたこと、そして愛する者たちが無事でいてくれたことを髪に感謝する。

人生何が幸せか。明日にでも夢が実現することを体中がわくわくして待ち望んでいる状態ではないか。

全訳の労を取ってくださった薄墨百合子さん始め皆様に感謝。


2022年4月27日水曜日

"The Black Cat" & "Tall-tale Heart" by Edgar Allan Poe

"The Black Cat" and "Tall-tale Heart"  

Both stories resemble with each other. Both begin with the satement that the narrator is not mad; Both kill a woman (or an old man); conceal the corpus in a wall (or under the planks). The policemen come and investigate the room throughly and think that the narrator is not the criminal; but at the very last moment, the narrator reveals that he himself is the criminal by knocking the wall (or saying, "Tear up the planks!").  

Both stories develop well, increase tention skillfully driving the reader to turn the pages one after another till the end. They are both horrible, cruel, and full of suspense. The reader is instantaneously abosorbed in the story and cannot stop reading. 

They are self-destruction stories.

2022年4月23日土曜日

炯眼に候  木下昌輝

 織田信長にまつわる7編の短編集。一話が80ページぐらいか。どの話も奇想天外で面白く造られている(信長の首が力士の腹に隠されていた。鉄甲船が沈められ、その上に別の鉄甲船を乗せる。天気を確実に予言する男を家来にする。鉄砲の弾が信長がつけていた十字架にあたる、など)。しかし、よく考えればどれも現実離れして、何か変だ。子供だましのような感じさえする。突飛すぎるからだが、これが売りであり、同時に瑕である。したがって、どれもフィクションの匂いがプンプンして作意の跡があちこちにみられる。工夫に工夫を重ねて作られたが、こね回して作ったことが見え見え。人工的でなく、もう少し自然体で描けないのか。木下氏は「オール読物新人賞」受賞者。「宇喜田の捨て嫁」を読みたい。


2022年4月22日金曜日

金閣炎上 水上勉

 ノンフィクション形式の小説。水上氏が事細かに最大限調べつくして金閣寺を燃やした養賢のことを著している。氏の執念を感ずる。

金閣寺を燃やした養賢は極悪犯のような扱いだが、この本を読むと、いかに哀れな青年(当時21歳)であったがが分かる。以下「金閣炎上」から抜粋。

久恒秀治氏(金閣寺庭園修理担当の発言)「……切羽詰まった彼(養賢)の心情が理解できる。(略)文化財を抱えた京都の寺院が『金閣炎上』をただの犯罪として見ないで、少年(養賢)が犯罪を犯してまで乱打した仏教界への警鐘を謙虚に受け取ってもらいたい。観光、観光と、ただそれのみに明け暮れする京都の寺院は、声の無い少年の抗議に深く心耳を傾け、慚愧し、宗教機関としての本来の面目を取り戻し、道場としての姿勢に立ち戻ることを願うのみである」p. 264

金閣寺住職・慈海和尚は当時の金で年間500円もの収益があった。現在の貨幣価値にすると五千万から一億円ほどか(松岡の感想)。

養徳寺住職・大量師(金閣寺が焼ける前夜、養賢と囲碁を打っていた)「わしはただ、あの子(養賢)が死にたかった気持ちが……いま透けるようにわかるんですよ」

水上「というと、それは金閣寺への反感からですか」

大量師「勿論、あの和尚(慈海)では反感がありましょう。ケチン坊で、自分は仕出し屋から肴を取って酒を呑んでおって、小僧ら(養賢たち)には小遣い銭もろくにわたさん人でしたから、反感は当然でしょう。(略)それと、養賢の場合は、やっぱり成生(なりう:若狭湾の半島にある地名)の西徳寺和尚(養賢父)とおっ母さんとがうまくゆかなんんだ、ちっちゃい時のごたごたもあって、その上、どもりという障害ももっておったということと、重要なことは不治の肺結核がすすんどった、あの病気でお父さんの死ぬのを見ておりますでな……それが大きな理由ですよ。誰からもぜぜりいわれて阿呆にされて育ち、金閣寺へ行って、大学に入っても差別されれば生きようがなかった。また田舎にも戻りようがなかった……心身ともにゆきづまった時期で、あの子は死にたくなって火をつけたんですよ。(略)かわいそうな子でしたよ」p. 308




    


2022年3月23日水曜日

Crooner by Kazuo Ishiguro

 Janeck(protagonist) helps Mr. Gardner to sing on a gondola below his wife's window as a memorial present for her, accompanied by Janeck's guitar. After singing, Mr. Gardner confesses their divorce. He was an old man, passed his day, but Mrs. Gardner is still young and may go upwards steps. His glorious days are remembered by Janeck's mother, a fan of Mr. Gardner.

A light touched short story. Too elaborate. It is obvious that it was a made-up story. Before they sails to the window, Mr. Gardner tells about his wife. That was too long. The story should be much more concise. Not exciting. I was not able to identify with Janeck.  NO moving story. Not entertaining.