2014年8月19日火曜日

上泉信綱伝 新陰流軍学「訓閲集」 

戦国時代の兵法についての詳しい解説書。当時の戦いの際、このような細かいことまで頭に入れ、戦ったのかという感慨がある。とくに面白いのは斥こう(間諜)、陣構え、戦法、攻城・守城、築城、首実検、気伝など。戦いに関するありとあらゆる策略(渡河、撤、陽動)方策、約束事、方法が書かれている。気伝などがわかる人は1万人に一人ぐらいか。実検にも首の持ち方から、三方への置き方、見方などが書いてある。陣地の作り方、幕の張り方、など。軍師は全て頭にいれ、縦横に軍学を駆使したのであろう。

赤羽根龍夫解説、スキージャーナル出版

2014年7月25日金曜日

恩讐の彼方に 菊池寛

 菊池は『主題小説論』で「大自然に対しては、殆ど無力に等しく見らるるか弱い人間の双の腕で、成し遂げた大偉業の前には、恩讐などの感情は、結局暁天の星の光の如く微弱であり、無価値であることを云おうとしたのである」と記しているが、「恩讐の彼方に」という題の意味がわからない。「~の彼方に」という場合、それは「~の向こうに」という意味で、例えば「水平線の彼方に」と言えば、「水平線のもっと向こうの方に」という意味である。「恩讐(恩義とうらみ。情けと、あだ=大辞林)の彼方に」とはどういう意味になるのか。「恩讐が彼方に消える」という意味なら「恩讐は彼方に」とか「恩讐が彼方に」という題の方がわかりやすい。「恩讐の」の「の」は主格の「の」として使っているのであろうか。言い換えれば「恩讐が遥か彼方に消えていく」という意味で「の」を使っているのか。「恩讐を越えて」ならば「恩讐という感情を超越して」という意味であるから「恩讐が微弱で無価値であることをあらわすことになるのだが、「恩讐を越えて」という題ではない。わかりにくい題だ。

1.禅海和尚の実話をもとにこれだけの小説を書く手腕が素晴らしい。

2.話の展開もエンタメとしてよくできている。市九郎を極悪人に仕立てるため主人を殺すだけではなく旅人を何人も殺させている。実之助が了海と一緒に洞窟を堀る場面とか、完成してから了海が「約束の日じゃ、お斬りなされい」と言った時、実之助が涙に咽ぶ場面はよくできている。

3.了海と実之助の心理描写がうまい。

4.ただ、八幡宮の参詣者が了海の噂をして、若い時に人を殺して懺悔して諸人済度の大願を起こしたそうじゃ、と話させているが、はたして一心不乱に洞窟を掘ることのみに集中している了海が自分の過去の過ちについて赤の他人に語るだろうか。また人を殺めた身であるのに「生まれは越後の柏崎」とまで自分のことを明かすだろうか。ご都合主義だ。

2014年7月17日木曜日

11/22/63 スチーブン・キング

 読んでがっかりした。この本はケネディ暗殺についての話だということは知っていて、キングは暗殺をどう取り扱うか興味津々であった。
   [ネタバレ注意] ところが、リー・オズワルドは暗殺に失敗し、ケネディがアンバーソンに命を救ってくれたお礼の電話をする。こんな話なら誰でも書けるではないか、過去に行って歴史的人物を、殺される前に救うなんて。例えば、古代ローマに行って、カエサルを救うことだってできるのだ。過去に戻っても歴史的事実を変えることができないというのがタイムトラベル物の根本原則だ。
 私の読解したところによれば、キングのタイムトラベルに関する考え方は、「過去をリセット」するということらしい。「兎の穴」は歴史的事実とは違う過去に連れて行く。これはインチキではないか。読者を馬鹿にしている。キングによれば、違う過去が複数あるらしい。  
 最後のシーンで、アンバーソンはセイディとダンスをするが、オズワルドに殺された女性とダンスをするなんて。どうしてできるのか。  
 この本がいろいろ賞を獲得しているが、どこがいいのか。

11/22/63 Stephan King

  This is a disappointing book. Before I read it, I knew it was about Kennedy’s assassination. I wondered how King would deal with the assassination.
  In the book, Lee Oswald misses shooting Kennedy. The president later calls Amberson to thank him for saving his life. I thought anyone could write such a story; you just go to the past and save a famous man before he is killed. For example, I go to the ancient Rome and save Caesar’s life. You can’t change historic facts. This is the fundamental principle of a time-travel story.
   According to my understanding of the book, King’s idea of time-travel is to reset the past. The rabbit-hole takes you to a world different from historical facts. You visit the past and undone them. Isn’t this tricky? Isn’t this a scam? The book fools the reader. According to him, there seem to be many different past worlds.
  The last scene where Amberson dances with Sadie may be moving, but how can you meet the woman who was killed by Lee?
   I do not understand why 11/22/63 won many prizes.
 

2014年6月27日金曜日

網走まで 志賀直哉

子連れの女性の動作が事細かに描かれており、映像を見るような筆使いが見事。母親の気苦労が伝わって来る。エンディングが唐突である。(葉書きのことは、最後に出てくるから、何の葉書か読者はわからない)しかし、妙に余韻が残る。こういう終わり方をしても良いのだ。
芥川の「蜜柑」は完成度が高いが、その分完成されすぎ。「網走まで」は中途半端な終わり方だが、芥川と同じくらいインパクトがある。

 

小僧の神様 志賀直哉

タイトルが良い。読者をひきつける。仙吉も仙人と結びつければいい命名だ
小僧とAの心理描写が巧い
章分けが良い。

最後に問題あり。「ここで筆を置く事にする」から始まる段落は作者の意見がいきなり出て、通常の小説には見られないエンディングとなっているが、こういう終わり方もOKなのか。志賀直哉だから許されるのか。第5章で「彼は考え出鱈目の番地と出鱈目の名を書いて渡した」とあるが、これは何のために作者は入れたのか。伏線として入れたとすれば、この伏線に対する係り結びがなければならない。ところが結びをはぐらかしているが。この点が宙ぶらりんである。伏線でなければ、住所を書かせる場面は入れる必要がない。

2014年6月25日水曜日

THE WILD NET Eudora Welty

Although I failed to grasp the theme of this fiction, I enjoyed reading it. Some of the key points are:

1. The beautiful and vivid description of the scenery
2. All the characters are well described so that the reader can grasp each individual.
3. A pleasant atmosphere (not pessimistic, even William Wallace) despite the failure to drag Hazel’s body.
4. The writer did not describe William’s disappointment clearly. Even he seems to be enjoying fishing.
5. What happened at the beginning? How could she hide from William? Why didn’t she stop him from asking help?
6. The ending is impressive: “And after a few minutes she took him by the hand and led him into the house, smiling as if she were smiling down on him.”