2009年10月5日月曜日

久坂葉子 「猫」

 好きな男が自分を去って、別の女と結婚する悔しさが「猫」という小道具をうまく使って描かれている。  愛しさ余って憎さ百倍という言葉があるが、師主人公は、Tを愛しているがゆえに、憎さが生じ、Tを殺せないから、せめてTの代理である猫を殺そうとする。殺せなくて、桐の幹にTと彫り、桐を抱き、Tという文字を愛しくなぞる。女の情愛が桐の木のあたりからうまく描かれている。   しかし、猫を殺す場面も桐に抱きついて涙を流す場面もなんだか嘘くさい。作り話くさい。ジャックナイフもなんだか現実味があるようで、現実味がない。 Tを殺せない、意気地なさは、感ずることができる。 文で気になること 1.難しい漢字、例えば、彷彿、屹度などを使っているのに、「言う」は「いう」、「つっ走る」は「つっぱしる」などひらがながたようされていて、困惑する。 2.自分の思いを(  )に入れるのはいい。 3.205ページのーーそれは残虐な企みを意味しているーーは英語の翻訳調でいただけない。 4.猫を殺す場面の「その形相のものすごさ」は、よく小説で、Don't tell but showとあるが、これに反する。2009/8/9 (日)

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